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【書評】施主の教養書として最適な、建築家の性格分析・相性診断本。

『建てずに死ねるか! 建築家住宅』(大島 健二 著)

著者自身がいわゆる「建築家」で、彼の視点から、
「(ハウスメーカーに頼まずに)建築家に住宅を頼むというのは、どういうことか」
をテーマに、様々な切り口で紹介を試みた本だと思います。

本書は「はじめて建築家、建築設計事務所と付き合うことになりそう」な人が一読しておく「教養書」として、オススメできます。精読する必要はありません。

発行が2002年12月20日(初版第一刷)と古いのですが、いわゆるノウハウ本ではないので(時代を感じさせる表現や世情は多々ありますが)エッセンスは今にも通じるところがほとんど。古本ならワンコインで入手できるという意味で費用対効果は高いです。

大目次は以下。施主の教養書として考えると、特に4章、7章、8章が役立ちます。

  1. これが「建築家住宅」だ!(1章)
  2. 「建築家」とは何ぞや?(2章)
  3. 「建築家住宅」の謎(3章)
  4. 「建築家」にもいろいろある(4章)
  5. 「建築家」はどこにいる?(5章)
  6. 建築雑誌の読み方(6章)
  7. 絶対に「建築家」に頼んではいけない人(7章)
  8. 建築家、その使用上の注意(8章)
  9. 「建築家住宅」に住む覚悟(9章)
  10. 「建築家住宅」の未来(10章)

血液型占いよろしく建築家の類型についてズバッと分類し、それぞれのタイプに合う施主(つまり家を建てたい人)はどんな人かという相性診断と解説、という構成です。
その内容が正しいという保証はない(著者の主観)わけですが、なんとなく正しいように感じられる点でも血液型占いに近いものがあります。

難解な文章と住宅の作品性にこだわり、あまり笑わない。(…中略…)「コンセプト」とか「私に任せてください」が口癖でたとえ住宅であっても社会に対する批評性のないものは作品ではないと考えている。(…中略…)難解な文章を書く理由は、本人は「学術論文」を書いているつもりだからだ。(…以下略)

【第4章「建築家」にもいろいろある】より

上記は「アカデミック系」として括られる建築士の説明の一部。触れたことがある人からすれば「あるある」。添えられたイラストがマオカラーを着用しているのも微笑ましい感じです。

若干内輪ネタが過ぎる感じもしないではないですが、著者自身の経験や見聞を元にした記述は率直であり、コミカルなテイストに自虐的な皮肉のスパイスが効いて楽しく読めて、それでいて、いわゆる「建築家」の輪郭をつかむことができるのではないでしょうか。
時折、建築系にありがちな理屈っぽいところや、それでいてよく読むと全然理屈になっていないところなど、自身で「建築家とは」を体現しているようで好感が持てます。